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会社指示で休んだのに…「有給とったから皆勤手当はナシね」そんなのアリ?
2023年07月08日 09時06分

有給休暇を使うと皆勤手当が出ないー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の会社には「月12000円」の皆勤手当があり、有給取得日が年5日まではつくそうですが、6日以上になるとつかないそうです。

子どもの学級で新型コロナ感染者が出て、PCR検査の結果がでるまで出勤停止と会社から言われたため、計6日以上になりました。日給計算のため出勤日数が少ない月に皆勤手当がないのは痛手で、「納得できない」といいます。

有給を取得すると皆勤手当がもらえないのは法的に問題ないのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。

有給休暇を使うと皆勤手当が出ないー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の会社には「月12000円」の皆勤手当があり、有給取得日が年5日まではつくそうですが、6日以上になるとつかないそうです。

子どもの学級で新型コロナ感染者が出て、PCR検査の結果がでるまで出勤停止と会社から言われたため、計6日以上になりました。日給計算のため出勤日数が少ない月に皆勤手当がないのは痛手で、「納得できない」といいます。

有給を取得すると皆勤手当がもらえないのは法的に問題ないのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。

●不支給が直ちに「違法」というわけではない

ー皆勤手当は法的にはどのような扱いなのでしょうか。

皆勤手当は、一月ごとなど決められた期間、休むことなく(早退、遅刻することなく)勤務をした場合に、奨励の意味で給与として支給されるものです。

法律上、必ずしも使用者が支給しなければならないものではなく、制度として導入している会社でのみ支給されます。残業代を計算する際の基礎賃金に含まれるので、皆勤手当の額が大きいと、支給の有無がその月の給与に大きく影響する場合もあります。

ー有給取得すると「皆勤」ではなくなるという扱いは問題ないのでしょうか。

使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、「賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定められています(労働基準法136条)。

これだけ見ると皆勤手当を支給しないのは法律違反のように思えますが、この規定は「不利益な取扱いをしてはならない」という文言ではなく、使用者に不利益な取扱いをしないようにする努力義務を課したものにとどまります。

ですので、有給取得すると「皆勤」ではない扱いが無効だというには、その扱いが「公序良俗違反」(民法90条)にあたるといえなければなりません。

●相談ケース「経済的不利益大きい」→無効の可能性

ーどのような場合に「公序良俗違反」となるのでしょうか。

有給取得をした場合に皆勤手当を支給しないという扱いが公序良俗違反にあたるかについて判断した判例(最高裁平成5年6月25日判決)があります。

皆勤手当を支給するタクシー会社で、「有給休暇を1日取得した場合には減額、2日以上取得した場合には不支給」という扱いが問題となりました。

判決は、労基法136条は努力義務であり、不利益取扱いの効果を否定するまでの効力はないと指摘。その上で、皆勤手当の減額措置や不支給は無効にならないと判断しました。

「有給を保障した労基法39条の精神に沿わない面を有することは否定できない」としつつも、その効力は、趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、有給取得の権利行使を抑制し、労基法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められない限り、「公序に反して無効」にはできないとしました。

タクシー乗務員は代替要員の手配が困難なことから、有給取得を避けた乗務員に皆勤手当を支給していたのは、有給取得を抑制する趣旨ではなかったこと、給与のうち皆勤手当の占める割合が小さかったことなどを理由に挙げています。

ー皆勤手当の不支給が認められることもあるということですね。今回のケースではどうでしょうか。

皆勤手当の金額が1万円を超えている点、有給を6日以上とるとそれ以後の月には皆勤手当が付かない点や、新型コロナでの出勤停止を会社から命じられていたという事情を考えますと、労働者は有給を取りにくくなってしまい、その経済的不利益も大きいといえます。

会社の業種や従業員数などの事情にもよりますが、こうした扱いが公序良俗に違反して無効になる可能性はあるといえるでしょう。

皆勤手当制度は、その扱い方によってはこのような複雑な問題に発展する可能性があり、使用者にとっても労働者にとってもお互いを不安定な立場にするものともいえます。会社として、制度導入そのものが適切かどうかを十分検討する必要があるでしょう。

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