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なぜ満員電車は違法ではない? 小田急「複々線化」にみる混雑の法律問題
2018年01月17日 09時54分

「集中混雑による影響で一部の列車に遅れが出ています。お急ぎのお客様にはご迷惑をおかけします」

1月中旬、小田急線上りの車内。世田谷区在住の30代女性会社員にとって、朝方の通勤時には聞き慣れた車内アナウンスとなってしまった。この日は下北沢-代々木上原駅付近で列車が集中し、女性は大事な朝の打ち合わせに遅刻したという。「満員電車がひどくて朝から体力が消耗するし、押されて体も痛い」。

TwitterなどのSNSでも、「人の早起きの努力を全て集中混雑で無にする鉄道会社。それは小田急電鉄」「集中混雑とか言い訳はいいから。さっさと(扉を)閉めないからそうなる」などと手厳しいコメントが並ぶ。

小田急電鉄広報によると、集中混雑を避けるために、列車が到着する前に分散乗車の案内とお願いをしているという。「混雑が集中し、お客さまのご乗車が困難な場合は次の列車へのご案内を行うなど、定時運行に努めております」(広報)。

ただ、混雑が激しい場合には駅係員が押し込む姿も時に見られる。広報は「次の列車をご案内する中で、お客さまが当該列車への乗車を希望される場合にはお客さまにお声掛けをしたうえでお荷物などを閉扉できるよう押させていただいております」としている。

「集中混雑による影響で一部の列車に遅れが出ています。お急ぎのお客様にはご迷惑をおかけします」

1月中旬、小田急線上りの車内。世田谷区在住の30代女性会社員にとって、朝方の通勤時には聞き慣れた車内アナウンスとなってしまった。この日は下北沢-代々木上原駅付近で列車が集中し、女性は大事な朝の打ち合わせに遅刻したという。「満員電車がひどくて朝から体力が消耗するし、押されて体も痛い」。

TwitterなどのSNSでも、「人の早起きの努力を全て集中混雑で無にする鉄道会社。それは小田急電鉄」「集中混雑とか言い訳はいいから。さっさと(扉を)閉めないからそうなる」などと手厳しいコメントが並ぶ。

小田急電鉄広報によると、集中混雑を避けるために、列車が到着する前に分散乗車の案内とお願いをしているという。「混雑が集中し、お客さまのご乗車が困難な場合は次の列車へのご案内を行うなど、定時運行に努めております」(広報)。

ただ、混雑が激しい場合には駅係員が押し込む姿も時に見られる。広報は「次の列車をご案内する中で、お客さまが当該列車への乗車を希望される場合にはお客さまにお声掛けをしたうえでお荷物などを閉扉できるよう押させていただいております」としている。

●国交省は「鉄道営業法26条で処罰した実績なし」

明治33年に成立し、今も適用される鉄道営業法26条は、「鉄道係員(が)旅客を強いて定員を超え車中に乗込ましめたるときは30円以下の罰金又は科料に処す」(罰金額は罰金等臨時措置法により2万円に増額)と規定する。

条文の「強いて」という表現がポイント。車両が満員状態であっても、自主的に乗りたい乗客を乗せるのは問題ないという解釈ができる。

実際、国土交通省鉄道サービス政策室によると、同法26条違反で処罰された例はこれまでにないという。日本民営鉄道協会は、鉄道車両の定員について通常の運行に支障のない定員数を示す「サービス定員」と考えており、乗用車や航空機、船舶においてそれ以上乗っては危険だという数を示す「保安定員」とは区別している。

日本民営鉄道協会の広報担当者は満員電車の改善について、「各社の自主的な取り組みにかかっている」と言う。

●押し込みでケガをすれば鉄道会社に損害賠償責任

では、もし押し込む行為が原因で乗客が負傷した場合、責任問題はどうなるか。2017年9月1日に弁護士ドットコムニュースが配信した記事で、前島憲司弁護士はこう指摘している。

「鉄道会社がけがをした乗客に対して損害賠償責任を負うことが考えられます。ただ、責任を負うとしても、乗客も満員電車であることを承知の上で乗車しているので、怪我をしないように回避する義務を負います」

損害賠償額への影響については、「けがをした方にも落ち度があるということで、賠償額が減額されることが考えられます」(前島弁護士)という。

●混雑率はワースト3位の192%、東京主要31区間中

小田急線の通勤ラッシュを経験したことがあれば、納得がいくだろうデータがある。

国交省が公表している東京圏における主要区間の混雑率データ(2016年度)だ。これによれば小田急線(世田谷代田→下北沢)は主要31区間中、ワースト3位の192%となっている。ちなみにワースト1位は東京メトロ東西線(木場→門前仲町)で199%、ワースト2位はJR総武線(緩行、錦糸町→両国)で198%。

●小田急は複々線化に期待 2018年3月スタート

不名誉な事態を打開する期待がかかっているのが、小田急の複々線化。着工からおよそ30年、この3月3日始発から運用がスタートする(新ダイヤは3月17日から)。

具体的には、 代々木上原-登戸の11.7kmで、複々線が完成する。これにより各駅停車と急行が別々の線路を走行でき、通過待ちやノロノロ運転が解消するという。ラッシュ時の輸送力は約40%向上し、混雑率は150%程度まで下がる見込みだ。所要時間も短縮する。

ラッシュピーク時(下北沢着8:00前後の1時間)での短縮時間は、新宿までの所要時間で見ると以下の通り。最大14分短縮するという。

経堂(現在21分→新ダイヤ14分)、登戸(現在27分→新ダイヤ18分)、新百合ヶ丘(現在38分→新ダイヤ28分)、町田(現在49分→新ダイヤ37分)、小田急多摩センター(現在54分→新ダイヤ40分)、海老名(現在61分→新ダイヤ51分)

小田急電鉄は「複々線効果を最大化し、当社沿線の価値を高めていくことで、これまで以上にお客さまから選ばれる沿線にしていきたいと考えています」としている。

小田急の見込み通りになるか、それとも乗客の期待が裏切られるのか。複々線がスタートした以降も注目したい。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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