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洗脳されかけた元「地下アイドル」の告白 「限界を超えろ」ライブ中に救急搬送も
2018年11月04日 10時39分

ライブハウスや地方をメインに活動する「地下アイドル」やその遺族が被害を訴える裁判が相次いでいる。弁護士ドットコムニュースがこの1年で取材しただけでも、セクハラやパワハラ、過重労働、未払い賃金などに関連する3件の訴訟があった。

記者会見で共通して語られるのは、休みが取れなかったり、事務所側に「支配」されたりするといった地下アイドルの「ブラック」な実態だ。

「今振り返ると理不尽なことも多かったけど、中にいるとヤバいって気づかないんですよね」。こう話すのは、かつて地下アイドルをしていた会社員のエリカさん(仮名、20代)。高校時代から約7年間、複数のグループを経験したという彼女に地下アイドル時代を振り返ってもらった。(編集部・出口絢)

ライブハウスや地方をメインに活動する「地下アイドル」やその遺族が被害を訴える裁判が相次いでいる。弁護士ドットコムニュースがこの1年で取材しただけでも、セクハラやパワハラ、過重労働、未払い賃金などに関連する3件の訴訟があった。

記者会見で共通して語られるのは、休みが取れなかったり、事務所側に「支配」されたりするといった地下アイドルの「ブラック」な実態だ。

「今振り返ると理不尽なことも多かったけど、中にいるとヤバいって気づかないんですよね」。こう話すのは、かつて地下アイドルをしていた会社員のエリカさん(仮名、20代)。高校時代から約7年間、複数のグループを経験したという彼女に地下アイドル時代を振り返ってもらった。(編集部・出口絢)

●怪我をしても40度の熱が出ても休めない

最初に入った地下アイドルグループで、契約書は結ばなかった。毎日のようにレッスンやライブの予定が入っていたが、休みは希望できず、組まれたイベントに必ず参加する形だった。

交通費は月1万円支給されたが、給料は「(売り上げからアイドルに対して)バック出します」と言われたイベントでしか出なかった。それも数千円程度。衣装は自分で布を買って作ったが、その費用も出ない。「基本赤字だった」ので、別のアルバイトをしながら生活していた。

その次に入ったグループでも、契約書はなかった。交通費は都内近郊の現場であれば出ず、給料はライブイベント前後に行うチェキ(写真撮影)のバックのみ。ライブは多い時で1日4回おこなった。

土日は午前8時に集合し終電で帰ることもざら。丸一日の休みは月1回あればいい方だった。怪我をしても40度の熱が出ても、事務所は「とりあえず来て」と言うばかり。平日夜のライブに参加するため、大学に通っていたエリカさんは、授業が遅めだと冒頭に出席票だけ出して抜けたこともあった。

●ライブ中に倒れて救急搬送

ある事務所は普段から「限界を超えろ」とはっぱをかけ、メンバーを肉体的にも精神的にも追い込んだ。エリカさんも、ライブ中に倒れて救急車で運ばれたことがある。「人がいっぱいの中で何時間もパフォーマンスをしていると、酸欠になって毎回意識が飛びそうになっていました」。

「いる意味がない」「グループにマイナスなんだよ」「迷惑だからやめたほうがいい」。事務所側からはあらゆる場面で人格否定され、ふとした時に突然涙が溢れ出てくることもあった。それでも当時は「自分が悪い、変えなきゃいけない」と思い込んでいたという。「事務所の偉い人に歯向かっても何も変わらない。立ち位置が悪くなるだけだから我慢するしかなかった」。

エリカさんによると、グループによっては「(給与や拘束時間について)普通の感覚になられると困る」という理由でバイト禁止のグループもあるという。エリカさんは地下アイドル時代もバイト先など他に居場所があったため、「普通」の感覚を失わずにいることができた。そのせいか事務所から「洗脳しづらい」と言われたこともあるという。

●遅刻や欠席、違約金のペナルティも

地下アイドルに対価がきちんと払われていない問題は、業界では驚くべき話ではないという。アイドル問題に詳しい安井飛鳥弁護士は「それなりに活躍してるように見えても、ギャラが月数万円というのは珍しい話ではない」と話す。

足立飛鳥弁護士

「地下アイドルはそもそもイベント報酬自体が少なかったり、まず名を売るためにボランティアでやっていたりするような仕事も多い。チェキやグッズを売って、その出来高を報酬としているようなところもある。最低保証給料があるような事務所は少ないでしょう」

事務所側からすると、アイドルに休まれると「ビジネスにならない」のに加え、事務所側が優位にマネジメントするために、遅刻や欠席する場合には違約金のペナルティを課すところもあるという。

また契約が適正であっても、法律問題だけでは片付けられない問題も山積みだ。その一つが学業との両立。中高生でブレイクする子も多いが、学校とアイドル活動のバランスをどう取るべきか国などによる客観的な基準はなく、業界の都合で作られた「業界の自主基準」任せとなってしまっている。

安井弁護士は「大手事務所では学業を優先させようという風潮ができつつあるが、地下アイドルではまだまだ浸透していない。子どもや親、事務所だけの責任問題ではない。社会全体で教育や福祉の観点から、未来を担う子どもが芸能活動する上でのルールを考えていかなければならない」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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