犯罪・刑事事件の解決事例
#遺言 . #遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)

公正証書遺言の有効性をめぐる兄弟間のトラブル。母親の意思を貫徹するために!

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鈴木 祥平 弁護士が解決
所属事務所みずがき綜合法律事務所
所在地東京都 新宿区

この事例の依頼主

60代 女性

相談前の状況

兄Aと弟Bの2人兄弟の事案でした。2人は幼いころにお父様を亡くして、お母様の女手一人で育てられました。お母様には、自宅の土地と建物のほかに、数千万円の預貯金がありましたが、89歳のときに心臓を悪くして亡くなりました。お母様が亡くなった後、兄Aは弟Bから、お母様が亡くなる約1か月前に「公正証書遺言」を作成していたことを知らされました。それを聞いて兄Aはびっくりしました。遺言に書かれていたのは、「ほぼ全ての財産を弟Bに相続させる」との内容でした。兄Aとしては到底納得できない内容でした。兄Aは、弟Bに対して「母親は無くなる直前、老人性認知症に罹っていたのだから遺言などする能力は無い」と主張して相続をめぐるトラブルに発展しました。

解決への流れ

兄Aがそのような主張をし始めたことから、どうしたらよいか弟Bはわからないということで当職のところに相談に来ました。当職は弟Bの代理人に就任し、兄Aの主張に対して、「この遺言は公正証書遺言であり、公証人が有効と認めたものだ」として遺言は有効だとの反論を内容証明郵便を兄Aに送りましたが、兄Aは納得しませんでした。 結局は、兄Aと弟Bとの間での意見の食い違いは溝が埋まらず、結局、兄Aも代理人を立てて弟Bに対して「遺言無効確認の訴え」(遺言は無効であるという訴訟のこと)を起こしました。訴訟においては、お母様が亡くなる間際に入院していた病院における診断書等一式が取調べられることになり、母親の老人性認知症の症状は軽度であったことが確認されました。その結果、裁判官は、「遺言は有効」であるとして兄Aの訴えを退けました。

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鈴木 祥平 弁護士からのコメント

精神的な病気等があることによって、十分な判断力がない場合に「遺言能力」が認められないことがあります。その場合には、遺言書を作成してもその「遺言書」は無効と法的に評価されます。「公正証書遺言」は「公証人が関与して作成される遺言」なのですが、公正証書遺言であるからといって必ずしも遺言能力が認められるものではありません。公正証書遺言であっても遺言能力が欠けるため遺言は無効とされた事例も数多く存在します。遺言書を作成する際に遺言者が認知症等の場合には、事前に十分な検討をすることが必要になってきます。遺言能力について後から紛争が生じることの無いよう予め弁護士等に相談のうえ対策を講じておくことが必要でしょう。また、遺言書の内容についても遺留分に十分に配慮するなど、できるだけ後々のトラブルが生じないようにする予防の観点も必要になってきます。